飛び出す絵本「赤胴鈴之助」Part.9
★「赤胴鈴之助」の面白情報箱②
★「赤胴鈴之助」の原作まんが
・1954年8月~1960年12月 「月刊誌:少年画報」
赤胴鈴之助の原作作家としては、生みの親である福井英一と育ての親の武内つなよしがいる。
オリジナルの原作者・福井英一は、過去の作品「よわむし鈴之助」をリメイクして少年画報で「赤胴鈴之助」を誕生させた。しかし、1話を執筆したところで福井英一は、狭心症で33歳という若さで急逝してしまった。その後を引き継いで連載を続け、大きく育てたのが新人漫画家だった武内つなよしなのである。
福井英一は、柔道漫画の「イガグリくん」を発表した人気作家であった。
- 原作者:福井英一
1921年(大正10年)生まれ。東京都出身。
旧制中学を卒業した後、日本映画社に就職し、動画スタッフ(アニメーション)を担当した。敗戦後、日本動画に入社。線画スタッフ(アニメーション)となる。日本漫画映画社で長編動画映画「王様のしっぽ」の制作に関わった。
1951年(昭和26年)、「冒険王」(秋田書店)の副編集長から黒澤明の映画「姿三四郎」の漫画版を描いてほしい」との依頼を受け、翌年、「冒険王」誌上で柔道漫画の「イガグリくん」の連載を開始する。また、「イガグリくん」は、戦後GHQが発した武道教育禁止の解放後、最初の武道漫画と言われている。
1954年(昭和29年)、「銀の鈴」(銀の鈴社)に連載していた「よわむし鈴之助」を基に「少年画報」(少年画報社)誌上で「赤胴鈴之助」の連載を始めた。しかし、人気作家として連日徹夜の仕事が続き、1回目の作品を完成したばかりで、過労による狭心症でこの世を去ってしまった。享年34。
手塚治虫とは、お互いにライバルとして闘争心を燃やした作家であったが、同時に「従来、なかったジャンルの漫画分野を開拓した」とリスペクトしていて、亡くなったことを受け、漫画仲間が集いその死を悼んだ。
- 育ての親:武内つなよし
福井英一の急逝により「赤胴鈴之助」は絶筆となったが、新人漫画家の武内つなよしによって連載が引き継がれることになった。
1945年(昭和20年)、外地から復員後、東京で紙芝居を描く。1952年(昭和27年)「燃えない紙」(探偵王)で漫画家デビュー。1954年(昭和29年)に急逝した福井英一の後を継いで「赤胴鈴之助」を描き始め大ヒット作品に育て上げた。
1957年(昭和32年)にはラジオドラマ化を皮切りに、映画化、そしてテレビドラマ化と立て続けに多くのメディアにも進出した。さらに、1972年にはアニメ化されて大きなブームを起こした。
また、1959年から「ぼくら」に連載された「少年ジェット」はテレビドラマ化され大人気となり、「赤胴鈴之助」と併せて代表作となった
★この本に登場する人物
主人公。秩父の山奥で育った金野鈴之助は、日本一の剣士を夢見て、父の形見の赤胴を着け、江戸にやってきて北辰一刀流の千葉道場で修業を続ける少年剣士。赤い胴を着け居ていることから赤胴鈴之助と呼ばれる金野鈴之助の夢は、日本一の剣士になることだ。
父・鉄之助を亡くし、みなしごとなるが正しい心と何事にも屈しない根性を持って、道場の兄弟子たちにいじわるされても、修業に励み、みるみるうちに腕を上げていく。
江戸を恐怖に陥れる鬼面党と戦いながら剣の修行を積み、人間的に成長していく。
周作の娘のさゆりも、親のない鈴之助に優しく接してくれている。
- 千葉周作先生
北辰一刀流の創始者。江戸で千葉道場を開く剣の達人。赤胴鈴之助の師匠で、鈴之助を愛情と厳しさで鍛え上げる。実在の剣術家・千葉周作がモデルといわれる。
- さゆり(千葉さゆり)
千葉周作の娘。美少女だが剣術の腕も確かで、道場破りに来た鬼面党の一人に薙刀で勝利するほど。
1955年(昭和30年)ラジオ・ドラマの「赤銅鈴之助」でさゆり役をオーディションで選ばれたのが後の大女優吉永小百合で、この作品がデビュー作となっている。ちなみに吉永小百合の本名は、小百合なのでこの役柄から名前を付けたのではなく、たまたま、役と本名が同じだったという偶然。
- 竜巻雷之進
千葉道場の門下生で赤胴鈴之助の兄弟子。昇段試合で鈴之助に敗れ、ヤケを起こし、真剣試合をしたことで千葉道場を破門される。破門後、鈴之助を呼び出し決闘するが、負けて江戸を去り修行の旅に出る。
修行の旅の後、鈴之助との勝負で目が覚め、千葉道場に戻る。
- 岳林坊
竜巻雷之進の兄。宝蔵院流の槍の使い手で江戸中の剣術道場を打ち破り、最後に千葉周作に負けた。鈴之助を付け狙い、鬼面党にも入党するが、弟の雷之進の説得で正しい道に目覚める。
- 鬼面党の首領
鬼面党の首領は、銀髪鬼の鬼首十郎太。江戸幕府を倒し天下を取ろうと企む悪の組織のボス。党員は全員鬼の面を被っている。幕府は鬼面党捕縛を千葉周作に命じるが、彼は病床の身のため、鈴之助は竜巻雷之進とともに鬼面党と闘う。
鈴之助の母を人質に鈴之助をおびき出し仲間に入れようとした戦いで鈴之助の真空斬りを破る。