飛び出す絵本「怪物くん」Part.9
★「怪物くん」の面白情報箱②
★「怪物くん」の漫画連載はいつから始まった?
人気漫画「ドラえもん」「おばけのQ太郎」「パーマン」などを世に送り出した漫画作家、藤子不二雄さんが1965(昭和40)年1月から1969(昭和44)年まで、月刊誌「少年画報」(少年画報社)にて連載した作品である。
怪物くんの連載前、少年画報で予告編を乗せる時には、まだ考えがまとまっていなかった。そのため怪物くんを後ろ向きにして、それを見ているドラキュラ、オオカミ男、フランケンの3人が驚いている様子を描いた。
その後、「週刊少年キング」「月刊コロコロコミック」「学習雑誌(小学館)」、「てれびくん」などにも連載されていた。
★「怪物くん」の原作者、藤子不二雄
藤子不二雄は、一人の漫画家の名前ではないことは有名な話である。漫画家二人が共同でストーリーやキャラクターを考え、一緒に漫画を描くというユニークな漫画家なのだ。これはお笑いコンビが芸人個人の名前の他にコンビ名を持っているのと同じ考え方だ。共通ペンネームだ。
その後、お互いの作風が違ってきたためコンビを解消して、それぞれ藤子・F・不二雄と藤子不二雄Ⓐのペンネームで活動することになった。
藤子・F・不二雄の本名は、藤本 弘。藤子不二雄Ⓐの本名は、安孫子 素雄。藤子不二雄は、藤本弘と安孫子素雄の共同ペンネームである。
このとびだすえほん「怪物くん」は、藤子不二雄Ⓐの作品だ。そのほかに「忍者ハットリくん」「黒イせぇるすまん」などがある。
一方、藤子・F・不二雄の作品としては、「ドラえもん」「パーマン」「21エモン」など。
二人で描いた代表作には「オバケのQ太郎」がある。
★主人公の「怪物くん」とは?
本名は、怪物太郎という。怪物が住んでいる怪物ランドで絶対的な権力者である怪物大王の子供なのだ。したがって怪物くんは、怪物ランドの「王子」なのである。地球へは、勉強を目的にやってきたので、怪物ランドからの地球留学生ともいえる。お供として怪物くんと一緒にやってきた「ドラキュラ」「オオカミ男」「フランケン」の三人からは「坊っちゃん」と呼ばれている。
身長99cmで体重29kgの小さな体だが、父親譲りの数多くのスーパー能力でやってきた地球で大活躍するのだ。
怪物くんでまず目につくのは、カラフルな帽子である。青と赤という反対色を基調としたツートンカラーだ。風呂に入る時もかぶったままで入るというほどで脱いだことのない帽子なのだ。
次に目につくのは、大きな耳である。大きな耳は福を呼ぶと言われる。幸運を招く耳を持つのが怪物くんなのだ。
顔で目につくものは、ほほに左右にある三本のひげ。子供なのに父親である怪物大王譲りのひげを持っているのだ。これこそ怪物ランドの世継ぎのしるしである。
★「怪物くん」は、どんな超能力を持っている?
怪物くんは数多くのスーパー能力をもっているが、そのなかから主な物を紹介しよう。
- 百面相
両手を広げて顔の前で、上下に動かすことで顔を自由に変えられる。この本の中でも、「オオカミ」になって三人組のどろぼうをおいかえしてしまった。タコの顔やのっぺらぼうの顔など自由自在になれるのだ。この早ワザには、みんなが驚いてしまう。
- 伸縮自在の手足
手足を自由自在に伸び縮みさせることができるのだ。人ごみの中では、足を伸ばして遠くまで見通してみることができる。渋谷の交差点のように混んでいるときろでは、大助かりできる。手の届かない高いところも手を伸ばすことで欲しいものをつかむことも可能だ。無精者には、何としても欲しいワザである。足を伸ばしてキックや手を伸ばして敵を締めつけることもできるのだ。
さらに驚くのは、舌を伸ばしてつまみ食いもできてしまう。あると便利なワザだ。
- 大爆発
本気で怒ったときに念力の大爆発を起こすことができるのだ。このワザは怪物大王に使うことを禁じられている。したがって、よほどのことがない限り使うことがない。「一、二、三・・・」と数えて我慢するのだが、五までいったときに我慢の限界を超えて大爆発を起こしてしまうのだ。
★この作品に登場する人物
- オオカミ男
身長164cm、体重101kgというメタボなスタイル。
怪物ランドのガンス地方の出身。本来は、満月の光を浴びると変身するのだが、丸いものを見ただけで変身するようになってしまった。ただし、単に丸いだけであったときには、中途半端な変身で終わってしまうことがある。
怪物くんの身の回りで洗濯、掃除などの世話や料理担当である。怪物ランドでは有名な料理人だったので怪物屋敷で食事担当となっている。
自分のことを「あっし」と呼び、しゃべりのクセは語尾に「でがんす」をつけることだ。オオカミに変身すると犬以上に嗅覚が鋭くなる。
- ドラキュラ
身長183cm、体重33kgというスリムなスタイル。
本名は、ブラド・テペシュ・ドラキュラという伯爵。祖父は公爵、父は侯爵という由緒正しい一族の出身で、ルーマニアの城主だっただけにプライドは高い。
黒いシルクハットとマント、モーニングコートというコスチュームを着ている。着ているマントで空を飛ぶこともできる。おシャレでキザな吸血鬼だが、吸血行為を禁じられているので、いつもトマトジュースで我慢している。
怪物くんに対してマナーやしつけを身につけさせる役を持っている。さらに、怪物の世界で一番の博識者なので学問や教養を身につけさせることも担当している。しかし、怪物くんはあまり言うことをきかないのだ。
自分のことを「あたし」というオカマ口調で、しゃべりの語尾に「ザマス」または「ザンス」を多用するくせがある。
吸血コウモリは、ドラキュラの忠実な部下で偵察役として活躍をしている。
- フランケン
身長297cm、体重252kgというビッグサイズな体格。
フランケンシュタイン博士が苦心して造った人造人間(フランケンシュタインズ・クリーチャー)である。体は大きく怖い顔をしているが、気はやさしくて力持ちである。
怪物くんのボディガードを担当しているが、怪物くんはスーパー能力を有しているので力を発揮する場面が多くない。しかし、その腕力はトラックを軽く持ち上げるほどの力持ちなのだ。
言葉はほとんどしゃべらず、すべて「フンガー」で気持ちをあらわす。
フランケンは、体が大きいので不器用と思いがちだが、手先が器用で粘土細工や彫刻が得意なのだ。
- ヒロシくん
怪物くんの親友。本名は「市川ヒロシ」という小学生だ。怪物くんが暮らす怪物屋敷のそばにあるアパート「アラマ荘」にお姉さんと二人暮らし。両親は亡くなっているためお姉さんは働いている。遊ぶこととイタズラが大好き。元気で気のいい少年である。
怪物くんのスーパー能力にびっくりしていたが、怪物くんと意気投合。いつも一緒に困難に立ち向かっている。
- ヒロシくんのお姉さん
怪物くんの親友「ヒロシくん」のお姉さん。18歳という若さだが両親を亡くしているため、働きながら弟の面倒を見ているしっかり者。本名は「市川歌子」。美人で明るく優しく、ヒロシくんにとっては母親代わりだ。
- 怪子ちゃん
身長101cm、体重28kg。
怪物ランドの貴族、ゴーリキ公爵夫妻の一人娘。怪物くんとは幼なじみでガールフレンドである。本名は怪物姫。かわいい女の子だが、わがままで短気だ。怒り出すと怪物くんもかなわない。
★「アラマ荘」ってどんなところ?
この作品では、「アラマ荘」という名前は出てこない。ヒロシくんの家として登場しているが、ヒロシくんの住まいは「アラマ荘」というアパートである。ここにヒロシくんとお姉さんの二人が住んでいる。怪物くんも同じアパ-トに住んでいるが地下道で怪物屋敷の地下室に通じていて行き来している。部屋の大きさは、六畳一間に台所という昔のアパートの間取りだ。
★「怪物屋敷」ってどんなところ?
この作品には、「怪物屋敷」も登場してこないが、怪物くんとお供の三人の住まいとして重要なアイテムだ。
洋館風の大きな家だが、人が住んでいなかったことや怪物が出入りするため、近所の人たちにお化け屋敷と呼ばれている。二階建ての建物で、空にはいつも暗い雲が立ち込めている。お供の三人(オオカミ男、ドラキュラ、フランケン)のそれぞれの部屋と怪物くんの部屋、そして立派な応接室がある。この応接室で楽しい時間を過ごしているのだ。
★一つ目「円盤」に乗っている怪物はだれ
一つ目円盤に乗って地球にやってきた宇宙怪物は、「ベム」と思われる。
「ベム」は、ベラボー星人で身長98cm、体重32kgという小さな体をしている。しかし、小さいからといって油断はできない。彼らは、地球の征服を狙っているのだ。催眠光線や人の頭を大きくするデッカチ光線で、怪物くんと対決する。怪物くんの最大のライバルの一人である。
★「怪物大王」とは
この作品には登場しないが、怪物くんの父親で怪物ランドの王様である。怪物ランドの国民から絶大な信頼を得ている。物体を溶かし石に変えてしまう眼光、瞬間移動、千里眼能力などあらゆる怪物が持っている能力すべてを身につけているのだ。さらに、不死身で死ぬことはない。
怪物くんを心より愛している父親だ。しかし、いたずら好きな怪物くんにとっては怖い存在だ。笑い声は「ゲボハハハハ」である。