飛び出す絵本「変身忍者嵐 正義の秘剣影うつし」Part.9

★「変身忍者嵐 正義の秘剣影うつし」の面白情報箱②

★「変身忍者嵐」の原作者は?

 「変身忍者」の原作者は、石ノ森(石森)章太郎(いしのもり しょうたろう)。1938年〈昭和13年〉生まれ。本名は小野寺 章太郎(おのでら しょうたろう)。1984年までは、出身地の宮城県登米郡石森町(正式には「いしのもり」)から町の名前の石森を拝借して、読みやすいように「いしもり」と名乗って、石森 章太郎(いしもりしょうたろう)を用いていた。

 9歳のときに手塚治虫の「新宝島」に出会い、躍動感のある漫画に衝撃を受け、手塚治虫のファンとなり、より一層力を入れて漫画を描くようになった。

 中学2年のとき、「毎日中学生新聞」まんが投稿欄に4コマ漫画を投稿したところ入選、以後投稿マニアとなる。

 1953年(昭和28年)高校入学後、「漫画少年」への投稿仲間を集めて「東日本漫画研究会」を設立し、肉筆回覧同人誌「墨汁一滴」を創刊した。第一期の会員には赤塚不二夫長谷邦夫高井研一郎などがいた。漫画の神様の手塚治虫に批評をして欲しくて制作した同人誌を手塚治虫に送ったところ高校2年生のときに、手塚治虫より仕事を手伝って欲しいとの電報が届き、アシスタントを務めるため上京した。

 高校生活を続けるために故郷に帰ったが、その後も手塚治虫の下書き原稿を家に送ってもらいペンを入れる仕事を続けた。才能を認めてもらって、1954年(昭和29年)高校2年の時に、手塚治虫の仲介で、「漫画少年」でデビューすることになる。デビュー作は「漫画少年」新年号に掲載された「二級天使」というファンタジックな漫画だった。

父からは大学に進学することを勧められ、漫画家になることを反対されていたが、喘息持ちの姉が両親を説得してくれたことで、高校卒業と同時に上京。1956年(昭和31年)手塚治虫をはじめ多くの漫画家たちが住んでいたトキワ荘で、作家活動を始めた。後を追うように姉も病気治療を兼ねて上京し一緒に住むことになった。

その後、最大の理解者であった姉を病気で失ったことは、石ノ森の作風に大きな影響をもたらした。

トキワ荘では最年少ではあったが、早くから頭角を現した。トキワ荘の住人で売れ子になる前の赤塚不二夫は、自分の漫画を描くよりも、石ノ森のアシスタントをする時間の方が多いほどだった。藤子不二雄赤塚不二夫らと共に、売れっ子作家になったあとも、長くトキワ荘住み続けた。

1959年(昭和34年)手塚治虫に誘われて、東京動画のアニメ映画「西遊記」の制作に参画する。

1960年(昭和35年)テレビドラマとのタイアップで「怪傑ハリマオ」の連載を始めた。

1963年(昭和38年)に住み慣れたトキワ荘を出て、鈴木伸一らとアニメーション制作会社「スタジオ・ゼロ」を設立した。

1964年(昭和39年)少年キング」で代表作となる「サイボーク009」の連載を始める。

1966年(昭和41年)、サイボーグ009」により第7回講談社児童まんが賞を受賞した。1968年(昭和43年)、石森章太郎プロを設立。佐武と市捕物控」により第13回小学館漫画賞を受賞

毎日放送からゴールデンタイムの子供番組の企画を依頼された東映は、「サイボーク009」で人気を博していた石ノ森に相談した。石ノ森は、昆虫図鑑のなかから見つけたバッタの顔をモデルに仮面ライダーを誕生させた。

1971年(昭和46年)仮面ライダー」のテレビ放送が始まり、変身ブームが巻き起こった。その後、「仮面ライダー」は、シリーズが長く続く人気ヒーローとなった。この成功をきっかけに同社における数多くの特撮・変身ヒーロー番組の原作を手がけることになった。

1975年(昭和50年)37歳の時に「日本漫画協会」の理事に就任した。さらに、1981年(昭和56年)常務理事に就任し、日本の漫画界のために活躍した。

また、日本のために経済企画庁の「経済審議会」の委員や「マンガジャパン」の代表世話役に就任した。

1986(昭和61年)、作家30年を機にペンネームを「石森章太郎」から「石ノ森章太郎」に改名した。

1998年(平成10年)心不全のため死去。

2008年、「一人の著者により描いた作品数が、世界で最も多い漫画家」としてギネス世界記録の認定を受けた。

★「変身忍者嵐」の漫画連載はいつ?

 週刊少年マガジン」誌上で1972年(昭和47年)10月号から41号に連載された。全12話。

★変身忍者 嵐とは?

主人公のハヤテが変身ポーズを取って「吹けよ嵐、嵐、嵐」と叫び、背中の刀のツバを鳴らすと、その特殊な振動により脳神経が活動を始め、体の細胞配列を変えて、嵐に変身する。番組の途中から刀を使わずにポーズと掛け声だけで変身するようになった。

素早い動きと数々の忍術で敵を倒す。また、目が見えなくても臭いで敵の居場所を突き止めるほどの嗅覚も備えている。主要武器は愛刀・速風と羽根手裏剣。通常の弓矢、飛行凧、火薬玉、吹き矢、龕灯など数多くのわざを使うが、主な必殺技は、この飛び出す絵本の題名にもなっている「秘剣影うつし」と「嵐旋風斬り」

★主人公のハヤテとは?

代々血車党の首領・魔神斎の片腕として仕えてきた一家に生まれた。しかし、魔神斉を頭とする忍者集団・血車党が、日本を征服という邪悪な野望を知り、父・谷の鬼十に志願して、父の編み出した「人間変身の法」により変身忍者・嵐となり、血車党壊滅を目的に日本中を旅している。

畳返しなどの忍術や刀の腕はもちろん、素手戦闘でもかなりの実力を発揮する。どんな毒にも耐えるよう訓練しており、南蛮渡りの馬も殺す毒を盛られても死ななかった。主な武器は愛刀・速風と羽根手裏剣

★血車党とは?

「血の掟」によって団結する千年の伝統を持った忍者集団化身忍者と呼ばれる改造人間を操り、平和になりつつあった世の中を再び戦乱の世に戻し日本征服を企む。嵐の出現によって日本征服が遅れたため、西洋怪人を引き連れた悪魔道人と協定を結んで嵐を苦しめた大魔王サタンが陰で操っている

★登場人物(変身忍者 嵐ことハヤテ以外の人物)

江戸幕府の命を受け、血車党の動向を調査していた伊賀忍者。血車党の企みを知り、ハヤテの仲間となって娘のカスミ、息子のツムジとともに血車党壊滅の旅に加わる伊賀の八方投げ(八方手裏剣を投げる)、伊賀のマキビシ固め、水遁の術、伊賀流縄縛り、忍法地降り傘(大きな布や唐傘を使い、ムササビのように高い所から滑空する)、伊賀のつむじ隠れ(煙玉を爆発させて逃げる)、縄抜けの術といった、さまざまな忍術を使いこなす。人形彫りも得意。

魔神斉と悪魔道人に奪われた「忍者大秘巻」天・地の巻を取り戻し、一度伊賀の里へ戻るが、大魔王サタンとの最終決戦の際には伊賀の5人衆を連れてハヤテの許へ駆けつけた。

  • ツムジ(タツマキの息子)

カスミの弟。好奇心が強い。それゆえに敵に罠にはまることも多い。流れ星手裏剣や特製煙玉、父と同じ忍法地降り傘などを得意とするが、忍術の腕はまだ修行の身であるが、ハヤテを助けようと一緒に行動する。一度はタツマキとともに伊賀の里へ帰ったが、円盤の存在をハヤテに知らせようとして伊賀のムササビ飛行機を勝手に使用し里を飛び出し、ハヤテの後を追うようになる。

  • カスミ(タツマキの娘)

タツマキの娘弟のツムジとともに化身忍者に襲われたところをハヤテに助けられ、仲間となる。明るく勝気な性格で世話役として一緒に行動する。江戸で医学を学んでおり、傷の手当てが得意ハヤテからもらった横笛「涼風」は、吹くと特殊な音波を発し、ハヤテの刀と共鳴してハヤテに危険を知らせる。普段は町娘の格好をしている。

★変身忍者の忍法

  • 忍法羽根分身

本作品でP.3の本文やエンディングの歌詞には存在するが、テレビ編では出てこない忍法。原作漫画では音よりも早く動くことで分身する術とされている。

  • 秘剣影うつし

愛刀「速風」の刀身に敵の影を映し、間合いを測って光を浴びせ、錯覚でタイミングを狂わせて斬る必殺技分身した相手の本体を見分けることも可能。超音波もこの技で跳ね返した。

  • 秘剣旋風切り

刀を旋風回転させた後、敵を斬る必殺技。旋風回転を利用して炎を消すことも可能。急降下しながらの旋風回転嵐旋風落とし、地獄の砂やサイレンの音波を跳ね返した嵐旋風返し、最終決戦で使用した嵐旋風起こしという応用技もある。

★血車党

  • カマキリガラン

右手の巨大な鎌を武器とするカマキリの化身忍者のこと。その右手の鎌は刃物としての機能だけではなく、その先端から弾丸を連射して相手を攻撃することもできる。嵐との二度の対戦の末、最後は真っ二つに斬られて滝の中で自爆する。

武器弾薬の輸送を行うナマズの化身忍者。大地震を起こし、電気鞭の忍法を使い、油まみれの体は隙間から自在に侵入し、刀をそらす効果を持つ。しかし弱点の火で嵐に撃退され、再戦でも影うつしの技に敗れた。

燃える水の採掘現場を監督する地の底から現れたゲジゲジの化身忍者ゲジゲジに変身して、地を這って高速移動するゲジゲジ走り、自分の体を切り裂いて分身する六ツ身分身のほか、体から油を吹き出して火を付ける火炎地獄など、多彩な技を持つ。直接対決ではハヤテに及ばず、秘剣影うつしに敗れる。

  • くノ一

 黒の忍び装束を着たくノ一の化身忍者。浴びせられた人間は発狂して殺し合う「七色の狂い粉」を使って日本中を混乱させようとしていた。また、催眠術で相手を操る「毒蛾呪い」という術を持つ。嵐の秘剣影うつしの応用技『二段斬り』に敗れる。

  • 化身忍者

動物の能力を人間に組み込んだ改造人間である。主人公のハヤテもの能力を持つ化身忍者だが、人間の心を失わずに戦うことから、自らの事を「変身忍者」と称する。

化身忍者はいずれも高い生命力を持ち、人間を遥かに凌駕する身体能力を有する。

  • ベニコウモリ

 吸血の紅コウモリ化身忍者。音波を発して頭を締め付ける術を使う。

  • 魔神斎

血車党の頭領。二百の下忍を従え自らが世の中を武力で支配しようという野心を抱く。全身を西洋の甲冑と鉄仮面で包み、黒いマントをはおり、金属製の杖を持っている。

  • 死人フクロウ

人間に、死んだ人間の目と心臓、腕とはらわた、骨と皮膚などを移植し、夜の世界を支配するふくろうの魂を乗り移らせることにより誕生した化身忍者変身忍者嵐を攻撃したが、跳ね返され、斬られて橋から転落死した。

  • ドクモリバチ

クサリ付きのモリを操る化身忍者。首輪から四方八方に毒矢を放つ連続毒矢撃ち、毒煙を吹き出す毒煙攻めなどの忍法を操り、モリの毒で人間を自在に操ることも可能。血車党の下忍に変えるために子供を集めたが、ハヤテたちに察知されて倒された。

  • 鬼火まむし

マムシをベースとした化身忍者で、毒を使ったり火を吹いたりして攻撃。抜け殻を出して攻撃する他、実に多彩な技を持っている。 

  • ガイコツ(骸骨)丸

血車党の大幹部で行動隊長でもある。頭蓋骨の一部がはみ出たような顔をしている。刀と鞭が武器で谷の鬼十を殺害した。不死身の体を持ち、タツマキは彼を苦手としている。南蛮の言葉にも通じており、死体を操る「死人操り」の術を使う。悪魔道人に不死身の魂を奪われて「地獄の業火」で跡形もなく焼き尽くされた。

  • ザリガニ鬼

全身甲羅でおおわれており、左手は巨大なハサミとなっている。水目潰しという恐ろしい技を持っている。他に毒あぶく、血車殺法尻尾打ちなどを駆使する。嵐との対決で、嵐の「旋風斬り」に破れて川船から転落、そのまま川船と共に爆死する。

  • お化けクラゲ

住民をひとり残らず始末することを目的としたクラゲの化身忍者。毒で相手を人形のように硬直させてしまう。また、ドクロが分銅代わりに使って、鎖を振り回して相手の動きを封じる「血車忍法・ドクロ鎖」という技も持っている。弱点は体の水分が乾いてくると戦えなくなること。水中で、嵐のキックによって爆弾が爆発し、それに巻き込まれて爆死した。

  • 吸血ムカデ

相手の血を吸って操る能力を持つムカデの化身忍者。血を吸われた人間の血は青く変色してしまい、治療することができなくなる。他に口から炎を吐く能力も持っている。嵐との決戦で「秘剣影うつし」に敗れた爆死する。

  • 人喰いガラス

血車党のドクロ館建設のための労働力を確保する作戦の指揮をとるカラスの化身忍者。クチバシで相手の目を攻撃する「血車忍法にわかめくら」という技を持つ。また、気球に乗って上空からカラス爆弾を投下し、爆破させる。嵐との決戦では嵐の「旋風斬り」に敗れ、その首を跳ねられてしまう。

  • カマイタチ

組み合わせると卍型になる二本の長い鎌を持ち、逃走時の黄色い煙や口から吐き出す白煙、毒粉を撒くしびれ殺しなど、数々の毒煙を操る化身忍者。武田の隠し金山の在処が記された金の狛犬を狙い、村人を次々と殺したが、ハヤテに追い詰められ、秘剣影うつしに倒された。