飛び出す絵本「国松さまのお通りだい」Part.9

★「国松さまのお通りだい」の面白情報箱②

★なぜ、同じ内容のアニメ作品なのに「ハリスの旋風」と「国松様のお通りだい」とタイトルが違うのか

 「ハリスの旋風」のハリスは、スポンサーのカネボウハリス(株)の製品「ハリスチューインガム」の宣伝のためにつけられた名前でした。しかし、カラー版でリメイクされたときには、カネボウハリスがスポンサーから降りたため、ハリスという言葉が使えなくなり、「国松さまのお通りだい」という題名に変えて放映された。

★「ハリスの旋風」の原作まんが

  ・1965年4月~1967年11月 週刊少年マガジン

★著者 ちばてつや

1939年(昭和14年)、東京都で生まれる。本名は、千葉徹彌。生まれた年に日本を離れ、1941年、2歳のときに満州に渡る。印刷会社に勤めていた父親が暖房用にと貰ってきた紙の切れ端に絵を書いて寒い冬を過ごしていた。終戦満州で迎え、日本に引き上げてくるまでの間、生死が隣り合わせの壮絶な人生をおくってきた。

1946年、一家で千葉に引き上げてきた。その後、東京都墨田区に移り住んだ。

「ハリスの旋風」もそうだが、貧しい少年の主人公が正義感強く、周りと騒動を起こしながら、すくすくと成長していく人生ドラマのストーリーが多い。このような漫画を描くうえで、ちば自身の人生が投影されていると思われる。

 「ハリスの旋風」は、ちば作品として初めてテレビアニメ化された。

 また、あしたのジョー」は、梶原一騎の原作をちばてつやの画風のテイストを加えて、ボクシングの青春をかける若者の人生ドラマを展開し、大人気を博した。当時の若者を魅了し、ジョーのライバル力石徹の死に対して実際の葬儀まで執り行われる社会現象までおこした。

16歳の高校生の時に、新聞の広告で漫画家を募集しているのを見つけて、日昭書店に応募した。社長の名前は石橋国松ちばにプロの生原稿を見せ、道具の使い方などを教えたことが、ちばがプロとして、漫画の執筆を始めるきっかけとなった。このとき執筆された「復讐のせむし男」は貸本として出版され、17歳で漫画家としてデビュー

1958年(昭和33年)、「少女ブック」(集英社)に掲載された「舞踏会の少女」が雑誌へのデビュー作品となった。

少年向け雑誌としては、1961年(昭和36年)に「週刊少年マガジン」(講談社)誌上にて「ちかいの魔球」(原作:福本 和也)が連載を始めた。

その後、紫電改のタカ」「ハリスの旋風」「あしたのジョー」「のたり松太郎」「あした天気になあれ」と男の世界を描いて爆発的なヒット作品を連発した。

兄弟には、漫画「キャプテン」の著者「ちばあきお」、漫画原作者七三太朗がいいる。妻は、漫画家の「チバユキコ」とちば一家は、漫画の世界で活躍している。

執筆活動を休止した後は、日本漫画協会の理事長、大学の教授、学長など漫画の発展と後進の育成に貢献している。

高齢になったちばは、「一日を一生だと考えている。朝は生まれたんばかり、夕方は、晩年で、床に入った時に『今日も無事に生かしてくれてありがとうございました』といって眠ると一日が貴重に思える」と語っている。

★この本に登場する人物

  • 石田 国松

この本の主人公。元気いっぱいの暴れん坊生き方が不器用で下手なのだが、弱い者の味方。いつも問題を起こすが、その一途さに誰もが共感してしまう。また、家族思いで正義感にあふれる主人公に魅了されてしまう。

国松は、ハリス学園に転向する前は、静岡県周智郡森町の中学に通っていた。しかし、問題を次々とおこし、どこの中学からも追い出されてしまったので、一家で上京した。

この国松のキャラクターは、豊臣秀吉を手本にしているように思える。豊臣秀吉は、尾張の国の農民の子供だった。手の付けられないわんぱく少年で、手に余った親は、寺の小僧として預けることにした。しかし、寺でも勤めをせずに、いたずらばかりしていて追い出された。

ある日、ハリス学園の園長先生との出会いがあり、「こってり説教をして学園で、思いっきり勉強をさせてやろう」と言ってもらえた。近所で悪さばかりする国松を少年鑑別所に送ることになっていたが、ハリス学園に通うことで少年鑑別所行きを免れた

ハリス学園に入学後は、持ち前の運動神経を活かして、スポーツクラブで活躍しながら成長していく。空手部、野球部、柔道部、サッカー部、ラグビー部、陸上部、水泳部と7つの運動部に入った好物は、オムレツ、玉子焼き、炒り卵、きんぴらごぼう好きなものは、ケンカとメシ、それにぐっすり眠ること。嫌いなものは、勉強とくどい説教。嫌いな食べ物は、ネギと人参

石田国松の名前の由来は、原作者ちばてつやの初めての単行本『復讐のせむし男』を発行させてもらった大恩ある日昭書店の社長「石橋国松」の名前にちなんで感謝を込めて「ハリスの旋風」の主人公を「石田国松」と名付けた

  • アー坊

国松の弟で小学生。兄を反面教師として育ったせいか優等生で成績も良い

 静岡県森町では、小さなそば屋を経営していたが、国松が暴れん坊で問題を起こしたため、上京して屋台のラーメン屋を営む。屋号は、「石田屋」

 いつも、あちらこちらで問題を起こす国松をやさしく見守っている

  • 朝井 葉子(通称は「おチャラ」)

ヒロイン国松のクラスメートで、ハリス学園新聞部の部長可愛いが気が強く、乱暴な国松も彼女には一目置いている。料理が得意

  • 岩波 剛三先生

ハリス学園で国松とおチャラのクラスの担任教師。ハリス学園内では「鬼の岩波」と呼ばれ、極めて真面目。しかし、堅物ではない。授業中に居眠りや早弁をしている国松には手を焼いているが、諦めてはいない。番長との喧嘩で国松が退学処分にされそうになった際には彼を弁護したことがある。担当教科は数学。剣道部の主任部長

 その後、サッカー部のコーチを務めるが、サッカーの経験がないようでサッカーに関する本を読んで勉強してコーチを務める。

  • 園長先生

ハリス学園の園長先生。名前はわからない。少年鑑別所に送られることになっていた国松をハリス学園に入学させることで立ち直らせることを考えてくれた恩人。国松がノックした際、園長先生の自宅に7つものボールが飛び込んだ。

  • バームクーヘン・ハリス先生

初代ハリス学園園長。学園内に胸像がある。

  • 古谷医院の古谷先生

喧嘩で怪我続きの国松の治療を続けてくれるお医者さん。治療費にも事欠く石田家に対して、ラーメンで儲かったら、まとめてもらうと優しく国松を見守ってくれている子供達には、「きんたま先生」と呼ばれている

  • 鬼塚くん

剣道部主将突きの鬼塚と恐れられている。

  • 新垣くん

柔道部の主将柔道五段

  • 番長

元剣道部副将名前は、福本くん

  • めがねくん

ハリス学園の生徒で野球部員国松を慕う少年で、名前通りに眼鏡をかけている。「せんぱァ〜いッス」が口癖

  • 殿山くん

野球部主将ピッチャーで4番

★原作漫画のなかで、いつも歌っている国松の愛唱歌

 下町の太陽 ぎらぎらもえて

 屋根の子猫が おはようさん

 軒のつばめが おはようさん

 どぶのねずみも おはようさん

 石松様に おはようさん