飛び出す絵本「天才バカボン」Part.9

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★「天才バカボン」の漫画連載はいつからだったの?

ギャグ漫画家の赤塚不二夫が人気漫画「おそ松くん」に続いて連載した漫画が「天才バガボン」である。その後、テレビで放映されると主題歌、登場キャラクター、せりふなどの新鮮さで一段と人気ものとなった。

★「バガボン」という不思議な名前の語源は何?

 「ガボン」の語源は諸説存在する。放浪者という意味の英語「バガボンド」から生まれといわれている。「バガボンド」そのものは、剣豪宮本武蔵を題材にした井上雄彦氏の作品の題材として名を残している。

 もう一つは、バカなボンボンから生まれたのではないかという説。

 

★原作者の赤塚不二夫は、どんな人?

 本名は、赤塚藤雄。昭和10(1935)年満州(中国)で生まれ、終戦を中国で迎えた、父親がソ連に連行されてしまったので、母親と兄弟とで日本に引き揚げてきたが、妹を亡くすという悲しい出来事を体験した。その後、父親も帰国したが厳しい生活が続き、中学を卒業するとともに看板屋に就職し、映画館の看板を描く毎日を過ぎしていた。明るく楽しく笑えるギャグ漫画の大家から想像できない、つらく厳しい少年時代を経験している。

 18歳のときに漫画家になるため上京し、手塚治虫など若手の漫画家が集まる「トキワ荘」に入居する。石ノ森章太郎横山光輝などのアシスタントを経験した後、少女マンガ「嵐を超えて」で漫画家デビューを果たす。

 その後、ギャグ漫画「ナマちゃん」が人気を博すと「おそ松くん」「ひみつのアッコちゃん」などのヒット作品を次々と発表し人気漫画家となる。昭和42(1967)年、週刊少年マガジンで「天才バカボン」を連載し、ギャグ漫画家の頂点に立った。「天才バカボン」をはじめ多くの作品がテレビアニメ化された。

 遊びには敏感で、サーフィンが話題になり始めると、サーフィン人口が50人くらいの時に、ヤマハに特注したグラスファイバー製のサーフボードで千葉の小湊でサーフィンを楽しんだようだ。

 アウトドアブームが来ると、いすゞに特注して日本に一台しかないキャンピングカーを作った。

平成20(2008)年、肺炎のため逝去。享年72。赤塚の葬儀では、テレビアニメ「天才バカボン」のオープニング主題歌が葬送曲として流され、タモリが白紙の弔辞を手にして、「私はあなたの数多くの作品の一つです」と読みあげた。

★タイトルが「天才バガボン」なのに、なぜ「バガボンのパパ」が主役なの?

ガボン」が雑誌に掲載された当初は、頭はよくないが心優しい子供「バカボン」を主人公にした漫画であった。連載しているうちに徐々にキャラクターの強い「ガボンのパパ」が主役の座を占めるようになってきた。

 原作者の赤塚不二夫も、「描いているうちにガボンのパパの方が面白くなった」と正直に心のうちを話している。さらに、レレレのおじさんピストルおまわりさん(目ン玉つながりおまわりさん/本官)など個性的なキャラクターが次々と登場し、「―なのだ!」「レレレのレ、おでかけですかー」「なんだキサマ!タイホするー!などのナンセンスなフレーズが次々と生まれ人気が沸騰した。

★「バガボン」のキャラクターはどこから生まれたの?

 作者の赤塚不二夫は、次のように述懐している。『1972年当時、バカが主人公になる漫画はタブーだった。でもさ、バカほど正論をはく人はいない。バカボンのパパじゃないけど、こっちが思うことをズバリというわけ。「賛成の反対!」とかね。クレームもきましたよ。そのときに「しばらくの間、読んでください」といったらしばらくして「分かりました。ガンバってください」って。愛すべきバカ、愛するバカを描こうとした趣旨を理解してくれたのだ。

 常識にとらわれずに新境地の作品を生みだし、赤塚不二夫の作風をつくりだした代表作品なのだ。

★バガボン一家の住所と電話の設定は?

 この本の最初のページにバカボン一家の家が登場しているが、ガボン一家の住まいには、住所設定がされている。それは東京都新宿区中落合である。この住所は、赤塚不二夫の事務所「フジオプロ」があるところだ。フジオプロの近くで実在する店が漫画のなかでも登場している。

 電話番号は、880-6974で「パパハ、ロクデナシ」とよむ。当時は黒電話で局番はまだ3桁の時代だった。

 ちなみに表札は「バカボンのパパ」となっている。バカボンの生まれる前は、どんな表札だったのか気になる。

★この作品に登場するバカボン一家の紹介

 バカボンの家族は4人。「バカボンのパパ」「バカボンのママ」の夫婦。そして長男「バカボン」、次男「ハジメちゃん」の4人だ。

 この物語の実質的な主人公。頭にねじりハチマキ、ダボシャツに毛糸の腹巻を身に着けてゾウリ履き。大人の常識や既成概念にとらわれない天才肌の人物だ。自由奔放な行動にみんなが巻き込まれてしまい、騒動をおこしてしまう。そもそも頭脳は、大変な天才だったのだが、あるとき風邪を引いてクシャミをした拍子に頭の部品が外れてバカになってしまったのだ。

 バカ田大学社会学部哲学科を卒業したインテリ?である。バカボンのパパのセリフが哲学的なのは、大学の専攻のお蔭なのだ。バカ田大学は、校歌で「都の西北、早稲田のとなり」と歌われているが偏差値は不明。ライバル校は、テイノウ義塾大学

 バカボンのパパは、格好を見ると職人のように見える。何もしないでフラフラしている父親というイメージがあるのだが、実は原作漫画では、靴屋を経営していた経営者だったのだ。いつの間にか靴屋をやめて、夜なきそば屋、クリーニング屋に勤めたり、警備員になったりといろいろな職業を転々したが、どれも長続きはしなかったようだ。それでも、バカボンのママはニコニコしている。バカボンのママは妻の鏡なのだ。

 美人で聡明でステキな女性がバカボンのママなのだ。この飛び出す絵本でも、1ページ目で花をいっぱい植えた花壇を作って、きれいな庭を演出している。さらに9ページ目でお客様を招待した場面では、テーブルにおいしそうな手料理をいっぱい並べている。家事も料理もできるすばらしい奥様ぶりだ。

なぜバカボンのパパと結婚したのか不思議だ。しかし、バカボンのパパもこのママがいてはじめて、家庭が保たれているようだ。

黒百合女学院に在学中しているときにバカボンのパパと出会っている。思い出の場面でセーラー服を着て黒百合女学院の校門にたたずんでいるバカボンのママは、とてもかわいい女学生だった。

 着物を着て太い帯を締め足元は靴といういでたちの少年がバカボンだ。原作漫画では、当初、着物の下にモモヒキをはいていたが、いつの間にかモモヒキを脱いでしまった。肥満気味なので暑くなって脱いだのかもしれない。

頭は今一つだが、善良でおっとりしているやさしい少年。題名にもあるとおり最初はバカボンが主人公だったが、赤塚不二夫が人気の高くなったバカボンのパパのほうに興味を持ったため、主役の座を降りることになった。しかし、

する題名は「天才バカボン」のままにしているのが赤塚不二夫の優しさを表している。この飛び出す絵本の中でも、バカボンはおとなしい良い子である。パパの言うことをよくきき、ママを大切にし、弟のハジメちゃんを愛している。

生後数ヶ月という赤ちゃんから4歳までの設定。生後3か月でしゃべり始めたようだ。顔を見るとバカボンのママの子とすぐにわかるほどそっくり。英語、高等数学、機械の組み立てもやってしまう天才だ。なにせタイムマシンまで自分でつくってしまう子供なのだ。いつもクールでかわいい役まわりである。

★この作品に登場する人物

  • レレレのおじさん

 格子模様の着物に下駄履き。いつも竹ぼうきで道路を掃除しているおじさんが「レレレのおじさん」である。なぜ、道路を清掃しているんかは不明だが、人を見かけると「お出かけですかレレレのレー」と挨拶する。道では、あまり会いたくない人である。

一度見たら忘れられない「レレレのおじさん」は、見れば見るほど杉浦茂ワールドのマンガから飛び出してきたキャラクターだ。少年時代から杉浦茂の大フアンであった赤塚不二夫は、ギャグ漫画家を志したのだ。

レレレのおじさんの意外性は、その職業だ。電気屋の社長なのだ。見た目と違い一番まともな人だ。なぜか哀愁を漂わせている。家庭を感じさせないキャラクターだが、五つ子五組の25人の子持ちという設定にも驚かされる。

レレレのレ」と「おでかけですか」としか話さない印象が強いのだが、原作まんがでは、当時の流行語をうたいながらお掃除をしている。「恋の季節(歌:ピンキーとキラーズ)」を機嫌よく歌っている。「わーすれられないのオー 青いシャツ着てさー」。

もう一曲は、「夕月(歌:黛ジュン)で「おしえてほしいのー なみだのわけをー スチャラカー」とご機嫌の様子。

天才バカボン」のなかで一番の愛すべきキャラクターである。

  • ピストルおまわりさん(あるときは目ん玉つながりおまわりさん/あるときは本官)

 「天才バガボン」に限らず赤塚不二夫のあらゆるマンガ作品に登場してくる「ピストルおまわりさん」。本名は白塚フチオである。赤塚フジオの父親は、警察官なので、そのパロディーか。その見た目でいろいろな名前が付いている。両方の目玉が鼻の上でつながっているので「目ン玉つながりお巡りさん」。いつも、「なんだキサマー!タイホするー」とさけんでピストルを撃ちまくるメチャクチャな警察官なので「ピストルおまわりさん」と呼ばれこともある。

また、自分のことを「本官」と叫ぶこともある。ときどき両手にピストルを持って撃ちまくっているが、おまわりさんはピストルをひとつしか携帯していない。もうひとつのピストルはどこから持ってきているのか心配になってくる。

  • ホッカイローのケーコターン

 物語と関係なく現れる正体不明の鼻垂れ小僧のキャラクター。正式な名前はわからないが、いつも「ホッカイローのケーコターン」というセリフしかしゃべらない謎の人物。